Kyoto City University of Arts
Advanced Design Studies
PoolRiver#4
「手売り」をコンセプトにした批評誌『アーギュメンツ〓2』が1000部限定で刊行され、5月1日の発売から1週間で約500部を売り上げるなど話題を集めている。20~30代の若手哲学者らが寄稿。筆者で編集も手がけた京都市在住の映像批評家、黒嵜想(くろさきそう)さん(28)は「批評のコミュニティーを可視化する実験。読者と直接会うことで、批評を欲している人たちの関心や問題意識を共有できる」と狙いを語る。
私たちは「多すぎる声」を前にして、音楽のように共振するか、轟音に耳を塞ぐかのように応対するしかない
いわゆるSNS以後、私たちは膨大な数の人間関係を一元化することでストックできている。だがそれゆえに、当人以外には確たるリンクの見えない、不気味な集団を作っている。原理的に追求される、新しい方法の可能性、危険性。一元化された関係性に引き裂かれた、二つの原理論にどう介入しうるのか。批評と実作の交差点はここにある。
限りなく『物語』が脱色され、協働を誘発するシチュエーションのみが提示されている。言い換えれば、そこでは「コミュニケーション」そのものが消費対象とされている。
インターネットの全面化以降、かつてなく不透明かつランダムな集団に囲まれた私たちは、それらを連絡させる言葉を必要としている。さもなければ、隣り合う集団はただ不気味に映り、私たちは「当事者」の峻別に「友敵」の分割線を引くか、あるいは目についたものを場当たり的に包摂することしかできなくなってしまうだろう。本書はそのような状況を打破するために刊行される。個と普遍を往復しながら、新しい「主語の単位」を設定する。