Kyoto City University of Arts
Advanced Design Studies
PoolRiver#19
メディア・テクノロジーの進展は、私たちの生活環境そのものを大きく変え、私たちの世界に対する認識の仕方も大胆な地殻変動をひき起こしている。膨大な個人情報とデータが渦巻く都市空間。ソーシャルメディアが浸透し、ユーザーの発信に大きく依存しながら膨大な情報が行き交う今日、私たちは自分にとって心地よい「インフォメーション・コクーン(情報の繭)」(キャス・サスティーン)に引きこもり、客観的な事実よりも感情や個人的信条への訴えが影響力を持つ「ポスト真実」の時代を迎えた。こうしたなかで、芸術は、メディア、テクノロジーとどのように手を取り合い、社会を変革する技芸(アート)としてその可能性を開いていくことができるのだろうか。<br />(...)<br /> デモクラシーの名の下では、誰もが平等であることが前提とされている。にもかかわらず、現実にはそうなっていない。ジャック・ランシエールにならって、「一方の対話者が、他方の述べていることを理解していると同時に、理解していない状況」が「不和」であるとすれば、政治が始まるのは、その不平等な分配という事実を浮き彫りにし、あたかも安定しているかのように見える既存のシステムに亀裂を入れるとき——真の平等が実現するとき——に他ならない。この意味で、メディアアートの実践とは、まさしく政治そのものではないだろうか。